50名の教育担当者向けセミナーQ&A集

2022年2月に実施された大手携帯会社のQ&Aセミナー

先日大手三大キャリアの一つの企業でQ&A形式の4時間セミナーがありました。
私はあらかじめ集まった質問集と当日受け付ける質問を片っ端に答えていくなかなかスリリングなセミナー講師を務めてきました。対象となるのは、教育担当者で店舗スタッフや店長との関わりに課題を感じている方が多かったです。

これは携帯業界に限らず、店舗ビジネスは人で成り立っているため人間関係が業績やモチベーションに大きく影響を及ぼします。これまでに数えきれないほどの業種を担当してきましたが、組織における問題は大中小かぎらず似ているように感じます。特に今店舗ビジネスは総じて人手不足に陥っています。さらに業界によっては高離職率に悩まされています。

今回のセミナーで挙がった質問の多くは私がこれまでの研修業務と照らし合わせてもかなりのあるある悩みでした。今日はその中から一部を紹介しようと思います。

Q 店長が指示待ちになることが多く、店舗が自走しない。どうしたらいいか?

管理職(SV)研修でもよく挙がる悩みの一つです。店長に主体性を持たせて積極的に店舗運営をして欲しいと思っている方が多いのですが、そもそも店長に求められていることが他の事例でも書いている「オペレーション型店舗運営」なのだとしたら致し方ないと思っています。オペレーション型店舗運営とは、ミスや無駄を最小限にする店舗マネジメントのことを指します。創意工夫をして顧客感動を作り出すのではなく、あくまでもマイナスを作らないことに主軸を置いた店舗運営スタイルです。ですから指示待ちが基本になるのです。悪気はありません、これまで店長に求められていたスキルがオペレーションのためいきなり自走することはできないのは無理がありません。オペレーション型の店舗運営からクリエイティブ型の店舗運営(創意工夫・創造力が重要)で顧客感動を作ることを店長の役割の一つにすることで少しずつですが、オペレーション型の店舗運営脳からシフトすることができるでしょう。

Q 業務内容の複雑化により疲弊しているスタッフのモチベーション維持はどうしたらいいか?

当社クライアントの中には各キャリアのショップがあるためルールや料金プランがコロコロ変わることは理解しています。たしかに大変です。しかし、ルールはルールなので1日も早く浸透させなければいけません。私は、ルールが変わることはチャンスだと捉えて指導をしています。「またルールが変わるのかよ」と不満になれば不満になりますが、ルールが変わることでより多くのお客様を自社の顧客にするチャンスが増えると解釈することもできます。「今回の料金プランの変更でこれまで取れなかった客層も取れそうだな!」と受け止めることは自由です。後ろ向きに解釈すればただの愚痴になってしまいます。愚痴や言い訳からは何も生まれません。受け止め方を変えていくコミュニケーションを重ねればストレスはチャンスに変わります。根性論ではなく、ルールや料金プランに対する受け止め方を変えることです。そして、1日も早くルールや料金プランが変わったことに対する現場の対応を徹底します。ミスやエラーが増えると「毎回ルールが変わるからこうなるんだよ!」と思われかねません。だから、無理をしてでも新しいルール・料金プランのオペレーション習得を目的とした勉強会やガイダンスは欠かせません。失敗経験をできる限り店舗スタッフにさせない努力を店長や教育担当者はしていく必要があります。

Q やると決めたことが続かない。自分がいない日に途切れる。どうしたらいいか?

これは教育担当者だけではなく、店長の悩みあるあるでもあります。店内で「これから新しくルールを作ります」と言ってもなかなか定着しない、さらに店長不在時には気がだれてしまい続けなければいけないこともおざなりになってしまう、という悩みを抱える店長は少なくありません。理由は大きく分けて二つあると考えています。
①なぜ、続ける必要があるのか?がわかっていない
②続かない理由を特定できていない
①ルールはルールだから!という強制を主体としたマネジメントは時代遅れです。させるのではなく、本人たちが「したい!」と思うようにコミュニケーションを運んでいく必要があります。そこで最も重要なのは「何のためのルールなのか?」を理解できている状態を作ることです。理由がわからずに「何のためにやってるんだ?」の疑問が残っているうちは定着させるのは難しいでしょう。
②途中で止まってしまうのは何か組織的な問題があるのではないか?と考えてみることが重要です。「何で続かないのよ!」と表面化した事象に振り回されても解決しないので、一つ一つ続かないポイントと向き合うことです。
以上です。①と②に取り組めば基本的に継続力は高まります。

Q 店舗間の温度差をなくしたいがどうしたらいいか?

店舗間の差を無くしたいという気持ちはわかりますが、時間がかかります。まず、最初に捨てるべきことは全店舗全店長を一気に振り向かせて主体性を持って教育したことを実行してもらうと期待することです。これは無理です。これまで15年間教育研修講師として色んな企業に関わりましたが、できた試しがありません。どの組織でも2:6:2や8:2の法則がある通り、主体的に取り組む層と仕方なく取り組む層に分かれます。一気に振り向かせるのではなく、影響できる人から影響の輪を広げることが重要です。そして、私が過半数の法則と呼んでいる事象がいずれ起こります。これは、影響できる店長が一人ずつ増えて過半数を超えると一気に他の店長も主体性が生まれる、という状態です。仕方なく取り組む層が過半数を下回ることで事態は好転します。組織環境が主体性が上回ることで変化します。ちりつもですが、最も確実な手法となります。

Q 店舗スタッフに対して伝え方を考えるものの、辞められるのが怖い、どうしたらいいか?

言い方で伝わり方が変わるのはわかりますが、実は「怒る・叱る」「怒らない・叱らない」ことで離職するかどうかが変わるというのはあまり関係ないと思っています。店長とスタッフや教育担当者とスタッフとの間に信頼関係があれば怒っても全然問題ありません。(私も研修で課題をやってこない受講生を叱りつけることがあります)
怒る・怒らないではなく、信頼関係が築けているかどうかがカギです。信頼関係が築けていなければ残念ながら怒ってしまうと関係は破綻してしまうでしょう。一瞬の怒りが問題なのではなく、日々スタッフとどうコミュニケーションを積み重ねているか?が重要だということです。伝え方よりももっと根本的に人間関係を育むという視点が必要です。

Q 個人面談をして変わって欲しいことがある場合どうしたら主体的に改善をしてくれるのか?

当社クライアントでも店長と店舗スタッフは月1回の個人面談をしてもらっているのですが、この質問通り、面談をしても「よしっ!これからもよろしく頼むな!」みたいな根性論で終わってしまうことを防ぐためにいくつかルールを設けています。その一つが会話はできる限り解釈が分かれないように具体的にすることです。例えば接客プロセスで改善するのであれば、入店から退店までのプロセスを明確にして、店長がスタッフを採点し、スタッフは自己採点をします。採点時点では両者が何点をつけたかはわからない状態になっています。そして、一斉に見せ合い点数の差を確認し、根拠を双方が発表をします。点数をつけた根拠は具体的である必要があるので議論が活発になります。店長>スタッフにもなるだろうし、店長<スタッフに点数の差が生まれることもあるでしょう。双方の主張を認め受け入れ改善をしていくことで具体的な改善策が立案されます。曖昧にしないことが面談成功のポイントです。

5つ紹介させていただきました。
御社の店長や教育担当者の悩み解決の一助になれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ジャパンブルーコンサルティング株式会社
代表取締役 成田直人

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